事実確認と整理
弁護士は法律的なアドバイスをしたり、法律的な手続によって事案を解決することが主たる仕事となりますが、事実の確認と整理についても高い能力を有しています。なぜなら、事実関係を正確に把握しないと法律の正しい適用ができず、正しい判断ができないからです。
依頼者様がトラブルに巻き込まれたと思ったとき、焦ってしまったり、怒ってしまったり、強い不安に襲われたりして、「どうしたらいいか、分からない!」「困った!困った!」という状態に陥ることがあると思います。
そんなときに、弁護士に相談すると、弁護士は、まず「事実関係はどうなのか」を質問しながら丁寧に確認します。
弁護士は事実を創作することはできません。正確な事実関係に従って(法的な観点から事実関係を整理して)、それに法律を適用するとどういう効果になるのかを考えて、アドバイスしたり対応したりするのです。
この「事実関係」をまず正確に整理する、というのはとても大切でして、これを整理するだけで問題が解決することがあるのです。
つまり、依頼者様がとても心配になってあわてて弁護士に相談したときに、弁護士が質問をしながら事実関係を整理していくと、「そんなに心配する必要はないですね。」「問題ないですね。」「そのリスクは、この程度ですよ。」と問題が整理されて、それだけで心配がなくなることは、とても多いのです。これは本当です。実際、過去にあった例ですが、「損害賠償を求められている。」という相談をしてきた顧問先がありました。落ち着いて話を詳しく聞いてみますと、「それは相手の責任ではないですか。」ということが判明し、こちらの責任ではないと賠償請求をはね除けて解決できたということがありました。思い込みで心配されていたのですが、事実関係を整理させていただいただけで解決した例のひとつです。こういうことはしばしばあります。
このように、弁護士と気楽に相談できる「顧問契約」を締結することは、大きな意味があります。法律的な対処をすると、それには一定の費用がかかりますし損害も発生したりしますが、相談と助言だけで問題が解決するなら余計な費用を抑えることができます。精神的な負担もとても軽くなります。この「安心感」だけでも高い価値があると思います。
余談ですが、「事実認定権」なるものは神ならぬ人間には存在せず、事実をできるだけ解明するという意味での事実認定はいわば義務ではないかと思ったりします。
それはともかく、弁護士は、依頼者様の話を整理して、事実関係をできるだけ正確に整理して、それを法的観点から判断する能力が、他士業よりもはるかに高いと言えます。
ですから、「こんなこと相談してもいいんだろうか?」とか遠慮したりしないで、心配事や問題だと思うことがあったら、できるだけ早く弁護士に相談してください。相談が早ければ早いほど対応できる方法も沢山あって被害も最小限に防止できますし、そもそも問題はないということが早期に分かって精神的に安心できることもあるわけですから、早く相談するのが一番です。
第三者的立場で冷静に事実関係を整理するからこそ、正確に判断できるということがあります(弁護士自身も自分のことになると、冷静さを少し欠いたりします)。ですから、そういう俯瞰的観点からものごとを見る癖がついている弁護士に相談することで、事実をできるだけ客観的・中立的に整理して、正しく判断ができるようになると思います。個人だけでなく、企業においてもそうですよね。企業の社外役員として弁護士等の法曹が就任することがあるのも、そういうことが広く認識されているからではないでしょうか。