所有者不明土地の解消のための民法一部改正など

相続があったのに登記がされないまま放置されている土地や、共有者の一部が行方不明などのために、有効に活用できない不動産がたくさんあるようです。

そうした不動産を有効活用しやすくするために、民法の一部改正がされたり、不動産登記法が一部改正されたり、相続土地国庫帰属法が制定されました。施行は、公布後2年以内とされていますので、令和5年4月28日までの制令で定められる日(但し、相続登記義務化は令和6年4月まで、住所変更登記義務化は令和8年4月までの定められる日)になります。

相続登記が義務化されますと、相続があってから3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料という制裁を受けることになりますので、注意が必要です。

また、一定の要件に該当しない土地については、申請により国庫に帰属させることができるようになりますが、崖地や土壌汚染・埋設物がある土地など、「この土地はあっても負担ばかりだ。」という土地は国庫に帰属させられない上に、国庫に帰属させるために10年間の管理費も収める必要があるので、どういう土地でニーズがあるんだろうかと個人的には疑問に思っています(農業を継がない人が農地を国庫帰属させるというようなケースでしょうか)。

所有不動産記録証明制度というものも始まります。今までは、例えば被相続人(亡くなったご両親など)がどこに不動産を持っているのかは、固定資産税の通知が来るまで分からず、固定資産税が課せられていない不動産については気づかないことがありましたが(固定資産税は市町村ごとなので、遠方の不動産は分からないことがあります)、法務局で所有不動産を調べることができるようになります。これにより、例えば「亡父のところへ生前に不動産業者が来て『広告して不動産を売って上げますから広告料をください』と言っていたのを亡父が追い返していたけど、今回調べたら、北海道に原野を所有していることが分かった。あぁ鉄道として開発される予定とだまされて買った土地を売ってやると言ってさらに詐欺に遭いそうになっていたんだな。親父はそれを追い返していたわけか。恥ずかしくて子供のオレには言えなかったんだなぁ。」ということも分かるかも知れません。本人又は相続人などであれば、所有している不動産を全部調べることが可能になります(氏名・住所と生年月日で調べてもらえるようです)。

また、住所を変更した場合に登記に反映することも義務化されますが、DV被害者の人などは旧住所での登記のままにしたり公開されないようにすることも可能とのことですので、加害者に住所を知られる危険は防止できます。

所有者が死亡した場合も登記に符号が付されるなど登記に現実の所有者の状態が反映されるようになりますので、不動産の調査・取得などの検討がしやすくなりますね。

共有で処分が難しい土地についても、従来の不在者管理人ではなく、当該不動産の管理に限定した不動産管理人の選任(地方裁判所へ申立)ができ、裁判所の許可により処分も可能になりますので、一部の共有者が所在不明でも共有不動産の処分がしやすくなります。塩漬けの不動産を取得したり処分したりできる可能性が高くなります。

その他共有物の管理の仕方も合理的に改正されて、過半数の共有持分を有する人の権限が強化されます。

小さい改正では、隣地の土地から当方の土地に隣地の木の枝が越境している場合に、従来は隣地の人に切除するように請求しないといけなかったのですが、民法の一部改正により、切除するように言ってもやってくれないとか、越境した木の所有者が不明とか急迫の事情があるときには、当方で切り取ってしまってよいことになります。従来は越境した根は切ってもいいけど、越境した枝は切れなかったんですが、枝も一定の場合は切ってしまえるようになるわけです。

その他共有物分割や隣地使用権の整備など、不動産に関わる改正がなされていますので、不動産が関係する遺産相続の問題や共有不動産の解決を希望している方、近隣関係の土地使用権に関して問題がある方など、不動産について問題を抱えているときは、弁護士にご相談ください。最新の法改正をにらんで、最善の解決方法をご提案させていただきます。

大槻経営法律事務所

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