藤原聡著『姉と弟 捏造の闇「袴田事件」の58年』(岩波書店)を読みました

袴田さんの事件というのは、警察によるねつ造の証拠によって、えん罪で死刑判決を受けた後58年間かけて再審で無罪を勝ち取った事件です。

大変な内容でした。裁判官がえん罪を見抜けずに、次々と有罪判決を行っていくのですが、最高裁判所の担当調査官が同僚に述べたように、「まさか警察が大がかりな証拠のねつ造をするはずがない。」という盲信が、このようなひどい結果をもたらしてしまったのでしょうと思いました。(ここを私がさらっと書いていることについては、誤判は許されないとひどく怒られるのが普通だと思いますし、そのご意見はまったく正しいのですが、私自身が当時同じ立場で警察員がこのような証拠のねつ造をすると疑えただろうかと考えると、自信を持って断言はできないので、さらっと書いています。後から結果を知った上で他人を非難するのは簡単なんですが、それはどこかずるい気がして私はあまりしたくないのです。無罪と判断した第一審の左陪席の裁判官は立派な人だったと思います。結局他の裁判官を説得できずに多数決で負けてしまうのですが。)

行政、警察や裁判官など、役所の権力をもった人たちは、弱い者に対して「権力をふるう」ことを喜ぶことがしばしばあるように感じます。自分の偉大さを実感したいのかどうか、プライドの置き場所がどこかずれているように思うことがあります。

この袴田事件で、拷問による自白や証拠をねつ造したのではないかと言われているのは、Kという警察員とその部下のHという警察員たちです。Kという警察員はかなりえん罪造りの有名人のようで、Wikipediaにも複数件のえん罪を造った警察員だと書かれています。このような人は、権力を使って人をえん罪に陥れて死刑で殺そうとしたのですから、こういう人こそ重罰を受けるべきではないかと思いますね。

事実認定は、民事も含めて、間違いのないようにしないと、司法制度に対する国民の信頼が損なわれてしまい、誰もが裁判所を信用しないで自力で暴力的にでも解決してしまう社会になってしまうでしょう。ですから、事実の解明、認定には、真摯に取り組まないといけないのだと思います。

強制執行制度も実効性を高めないと、判決をもらっても借金を返済しないユーチューバ-を債権者が刺殺してしまった事件のように、自力で暴力的な行為をしてしまう社会になってしまうと思います。そんなことをする人が責められるのは当然ですが、制度的な問題も原因であることをごまかしてはいけないと思います。

袴田さんの事件に関心がある方は、是非読んでみてください。

袴田さんのお姉様や、袴田さんを支援した方たちの強さに、本当に感銘を受けます。よくあきらめないで頑張ったものだなぁと本当に心から尊敬の念を感じます。

おすすめの本です。

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