証拠の存在が大切であること
インターネットで無料の小説が読めるサイトの一つとして『小説家になろう』というものがあります。このサイトにはいろいろな小説があって読めるですが、最近見つけた短編で『女神様がやっちまいなとの思し召しです』というものがあります。これは、聖女である義妹を虐げたとして、王太子より国外追放を命じられた義姉が、隣国で聖女・隣国の王子の婚約者となったことで、過去の真実が明らかにされていくという話です。その時に、真実を明らかにするのが、女神に事実の真偽を問う真実の判定という儀式です。この儀式は「その者が述べた事に嘘がないか女神シリスに問うものだ。(中略)偽りがあれば紙は燃え上がり、正しければ女神シリスの祝福の光が灯る。」というものです。この儀式により真実が明らかにされていきます。しかし、現実社会にはこのような真実を明らかにできる女神はおりません。
残念ながら、裁判では真実は明らかにできません。裁判へ過剰な期待をしても残念な思いをすることになることが多いでしょう。特に法律に疎い人はそういう思いをすることが多いと思われます。
それは、裁判が基本的に証拠により証明する仕組みになっているからです。裁判官は神ではないので、真実は分かりません。証拠がなくても真実を判定できる神はこの世にはいないのです。ですから、裁判で請求するためには、契約書や請求書・納品書などの証拠がとても重要だということを強く認識していただきたいと思います。
外国の裁判所ですと、中には裁判官がワイロをもらうのが当たり前に横行していて、より沢山ワイロを送った側が勝訴するという世界もあるようです。そうすると、裁判はとても不経済であり、裁判なんか利用しない方が経済的に合理的という判断も十分にあり得ると思います。
裁判を避けるのが経済的に合理的であるならば、ある程度の回収不能債権や損害はやむを得ないと割り切ることもあり得ると思います。その上で、そのリスクをできるだけ最小にできるように、リスク管理をしっかりやるということが必要だと思います。つまり、信用できる相手としか取引しないで定期的に信用管理を行うこと、最初の取引相手とは大きな取引はしないで徐々に取引の拡大を行うこと、取引相手の支払サイトを短くするとかこまめに回収すること、遅延損害金もしっかり取ること、一定の損害を見越した利益率を確保する(取引価格の決定や原価率などに織り込む等)こと等の対応を考えた方がいいと思います。
法律を知らない人、弱い立場の人は、裁判では知識のないこと・弱者であることが完全に不利になることも多いと思います。その例のひとつは浜松支部であった自衛隊セクハラ事件の第一審判決だと思います。この種の事件では弱い立場の被害者が証人を見つけ出すことは極めて困難で、証人として証言してくれる人はとても貴重で自分の立場が悪くなっても勇気を振り絞って無償で証言してくれるのです。しかし、このセクハラ事件では、そうした証人を「信用できない」とすっかり排除して、被害者の請求をほとんど認めない判決が下されたのです。それが高裁でひっくり返されて被害者の請求が認められたのは、自衛隊で行われた尋問記録によって真相が明らかにされたからです。これは被害者にとってとても幸運だったと思います。裁判所の手続だけでしたら、弱者が弱いことこそが罪であり、請求は認められなかったのではないかと思います。この種の事件では実際のセクハラの現場の証拠などは存在しないことが多くて、周辺の事情の間接的な証拠ではやはり弱いのです。
裁判では証拠がなければ勝つことは困難ですから、弁護士に早く相談していただければ、そこからどんな証拠が集められるか一緒に考えてアドバイスをすることができます。ぜひ早めにご相談ください。
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