辞めるべきときは辞めるということ

公的な業務のご依頼を受けて就いていることがありますが、一定の時期が経過したら辞めさせていただくことがあります。あまり長く続けていると慣れが生じてしまって十分に機能しなくなるおそれを感じるときには、任期を更新しないで任期満了で退任することを申し出て承認をいただいたりします。

「出処進退」と言いますが、私自身は辞めるべきときにはすっぱりと辞めるべきだと思っていまして、今まで現実にそのように実行してきています。辞めてほしいと言われたときも、一言も異議を述べずに辞めてきました。

これは、ただあきらめがいいということではありません。どうしても自分がやらなければならないと思われることはしつこくあきらめずに、解決するアイディアを考え続けたり、調査を続けたりしてしつこく抵抗・追求します。でも、今までの人生でも何度か「これは退くべき」と感じたときがあり、そういうときには自分は幸いにもすっぱりときれいに潔く退いてきました。なぜかは分かりませんが、いざというときには執着を捨てることができるみたいです。

また、自分が十分に職務をすることができないというときも辞めさせていただくことがあります。かつて、身寄りのない高齢者の人が施設に入れるように保証人等になったり財産管理を代行する事業法人に、代表者が信頼できる(と思われた)ので、信頼できる税理士さんと一緒に参加したことがありました。こういう身寄りのない高齢者の保証や財産管理やケアを行う場合は、どうしても横領等の危険が伴います。誘惑が多い業務とも言えるでしょう。それについては、信頼できる税理士さんが会計を管理してくれましたし、高齢の依頼者さんの遺言書や財産管理契約の作成については私が監督していたので財産全部を事業法人に寄付するというような危険な内容の遺言書を作成したり財産が横領されるという危険がなかったのです。ところが、あるとき事業法人の代表者が交代になり、新しい代表者は今まで我々がやってきた業務を否定したり不自然な行動をし始めて、ほどなく税理士さんを解任して別の税理士に変更してしまいました。そのことを解任された税理士さんから聞いて、私もすぐに辞めさせていただきました。信頼できる税理士さんが会計面で管理してくれていたから私も安心していたのであって、それが信頼関係のない税理士さんに変更されたら、安心して業務を続けることができなくなってしまったのです。新しい代表者は別の弁護士に依頼したようですが監理はさせなかったようで、新しい代表者は、私が辞めた後しばらくしてから、依頼者さんの財産の横領事件を起こし、逮捕される事態になりました。依頼者である高齢者の人の遺言書も書き直させて、全部事業法人に寄付するという内容にしてしまっていたようです。残念な結果になりました。組織には業務を監査するシステムは必要不可欠だと思います。私も参考人として警察から事実関係を聞かれましたが、私が辞任を申し出た書面が残っており、私の辞任後に横領行為等が行われたので、私は責任を一切問われませんでした。むしろなぜ辞めたのかを疑問に思われたようでした。責任を持って続けられないからと説明しましたが、まだ事件が発生していないのに事業法人からの収入を捨てて辞めたのが不思議だったようです。

自分が責任を持って管理(コントロール)できない場合には、是正されない場合には即座に辞任させていただくことがあります。責任が持てないからです。

辞めるべきときに潔く辞めることも大切ではないかと思います。

大槻経営法律事務所

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